幽子ちゃん:「ねぇタカシ……車って、生まれ変わるたびに人間っぽくなっていくのね」
場所:夜の歴史博物館。古いフォードT型の展示の前で、タカシと幽子ちゃんが立ち止まる。
タカシ:
「見てみぃ、これが“自動車の原点”やってさ。T型フォード。100年以上前の車やけど、こいつが“庶民の足”って概念を作ったんや。」
AIくん:
「はい。1908年、フォード社が導入したアッセンブリーライン(組み立てライン)が、世界の産業構造を変えました。部品を流して作る方式により、1台の車を3分で組み上げられるようになり、自動車は“贅沢品”から“日用品”になったんです。」
幽子ちゃん(車のボディをなでながら):
「“流れ作業”で命が吹き込まれるなんて、不思議ね……人間だって、こんなふうに効率よく作れたら……」
タカシ:
「いやいや、それはホラー映画やで。けどフォードが作ったこの仕組みが、今のAIとロボットによる自動生産の原型って考えたら、すごいよな。」
AIくん:
「続く1970年代、世界を揺るがせたのがオイルショックです。当時は“馬力こそ正義”という時代でしたが、燃料価格の高騰で一変。
“いかに少ない燃料で走れるか”が最大のテーマとなりました。これが日本車の躍進の始まりです。」
幽子ちゃん(遠い目で):
「時代が求めたのは“速さ”から“賢さ”へ……。愛より燃費、情熱より効率……なんだか切ないわ。」
タカシ:
「詩的やけど間違ってへん。あの時、“燃費のよさ”っていう新しい価値観が生まれたんやな。
今のEVの“航続距離競争”も、あの頃の省エネ思想の延長線上にあるんか。」
AIくん:
「そして1990年代。安全技術の時代です。エアバッグ、ABS、衝突安全ボディなどが一気に普及しました。
車は“速さを競うもの”から、“命を守るもの”へと進化したんです。
この思想が、現在の**自動運転における機能安全(Functional Safety)**の原点です。」
幽子ちゃん:
「なるほどね……安全って、“死なないこと”だけじゃなく、“誰かを失わないための技術”でもあるのね。」
タカシ:
「おい、ちょっと泣けること言うやん。」
AIくん:
「そして今、私たちは“第4の転換点”に立っています。ハードウェア中心の時代から、ソフトウェア中心の時代へ。
デジタルツイン、AI、SDV……車は走る“プログラム”となりつつあります。
T型フォードが“生産の革命”を起こしたなら、今の変革は“知能の革命”です。」
幽子ちゃん:
「100年前の工場の流れ作業と、今のAI制御ライン……どちらも“命を組み立てる”作業なのね。
でも今度は、人の手じゃなくて、データがそれをやってる。」
タカシ:
「ほんまや。昔は鉄が動き出して驚いたけど、今は情報が走り出してるんやな。」
まとめ:「車は、人間の“価値観”を映す鏡だった」
フォードが量産を発明したとき、世界は“速さ”を覚えた。
オイルショックで、“賢さ”を学んだ。
安全技術で、“優しさ”を思い出した。
そして今――AIとデジタルが、人間の“判断”を走らせようとしている。
