第4回 ベッドフレームの製作(対災害用車両改造)

― 普通のクルマを、災害に備えるクルマへ。―
双輪自動車が取り組んでいる「対災害用車両」の開発。
「災害で困った時に、クルマの専門家として何かできることはないか」
そんな想いから始まった、日産セレナの改造プロジェクトです。
第1回では内装を取り外し、第2回では複雑な床の施工、そして第3回では天井照明の取り付けに挑戦しました。
少しずつ変わってきたセレナの車内。
しかし、ここまではまだ下準備のようなもの。
今回から、いよいよ車内で過ごすための設備づくりが始まります。
第4回のテーマは、**「ベッドフレームの製作」**です。
① まずは3D CADで設計
【写真①:3D CADで設計したアルミフレーム】


いきなり材料を切り始めるのではなく、まずはパソコン上で設計します。
今回使用するのは、アルミフレーム。
軽量で加工しやすく、組み合わせによってさまざまな形をつくれる材料です。
3D CADを使って、ベッドの土台と、その横に配置する設備用のフレームを設計しました。
図面上では、なかなかいい感じ!
ただし、相手は普通の部屋ではなく、クルマの車内です。
設計どおりにつくっても、実際に収まるとは限りません。
ここからが本当の勝負です。
② 設計図が、実物になりました!
【写真②:完成したアルミフレーム。化粧板も取り付け済み】

こちらが、最初に組み上げたフレームです。
アルミ材を組み合わせ、側面には化粧板も取り付けました。
パソコンの画面で見ていたものが、こうして立体になると、ちょっと感動します。
しかも、アルミの骨組みに化粧板が加わることで、少し家具らしい雰囲気も出てきました。
でも、まだ安心はできません。
問題は、これが本当にセレナの車内に収まるかどうか。
③ いよいよ車内へ。さて、収まり具合は?
【写真③:セレナの車内にフレームを仮置き】

実際に車内へ運び込み、配置してみました。
おおっ、いい感じ!
設計していたフレームが、想定した場所に収まっています。
車内に置いてみると、ベッドの高さや通路との関係も、ぐっとイメージしやすくなりました。
ただし、ここから細かな調整が必要になります。
クルマの内装は曲面だらけ。
ほんの少し寸法が違うだけでも、使い勝手が変わってしまいます。
そこで今回、大活躍したのが……
新しく導入した「秘密兵器」です!
④ 秘密兵器、導入しました!
【動画④:金属用高速切断機でアルミフレームを切断】
今回、新たに導入したのが、金属用の高速切断機です。
これが、本当に大正解でした!
それまでは、材料の長さを変更したり、細かな部品を追加したりするにも、加工の手間がかかっていました。
ところが、この切断機のおかげで、必要な寸法に合わせて材料を切り出せるようになりました。
「ここをもう少し短くしよう」
「この部分に補強を追加してみよう」
「やっぱり、こっちの形の方がいいのでは?」
そんな試行錯誤が、どんどんできるようになったのです。
加工できる自由度が広がると、アイデアを形にするスピードも変わります。
そして、もう一つ心強いのが、私たちの仲間に金属加工の元スペシャリストがいること。
経験のある人がいると、加工方法や部材の組み合わせについて、次々と知恵が出てきます。
まさに、ゴリゴリ前進!
切断機を導入してよかった!
と、つくづく感じた工程でした。
⑤ アルミフレームは、つなぎ方も工夫できる
【動画⑤:アルミフレームの接合方法を紹介】
アルミフレームの面白いところは、専用の接合部品を使って、さまざまな組み方ができることです。
今回の動画では、その接合方法をご紹介しています。
部品を組み合わせることで、途中に支えを追加したり、必要な場所に横材を渡したりできます。
実際の車内に合わせて、構造を少しずつ調整できるのが大きな魅力です。
設計して、つくって、実際に合わせて、また直す。
この繰り返しこそ、試作車づくりの面白さですね。
⑥ ベッドの中央を支える部品を製作
【写真⑥:中央の支持部材を加工・製作】

ここから、ベッド部分の製作に入ります。
ベッドには、人が横になるための十分なスペースが必要です。
そのため、フレームをただ四角く組むだけではなく、中央部分をどう支えるかも考えなければなりません。
そこで、先ほどの加工設備を使って、中央を支えるための部品を製作しました。
こうした小さな部品一つにも、工夫が必要です。
⑦ そこへ4本のフレームを渡していきます
【写真⑦:ベッドを支える4本の横フレーム】

次に、製作した支持部材を使い、4本のフレームを渡していきます。
これが、ベッドの床面を支える骨組みになります。
一つずつ部材を合わせながら、組み立てていきました。
このあたりから、だんだんとベッドらしい形が見えてきました!
⑧ 組み立てると、こんな形になりました!
【写真⑧:組み上がったベッドフレーム】

こちらが、組み上がった状態です。
いかがでしょうか?
最初の3D CADの設計図から、ここまで形になりました。
車内のスペースを活かしながら、ベッドとして使える広さを確保しています。
しかし、実際に使うことを考えると、まだ気になる部分があります。
それが、人が乗り降りする手前側のフレームです。
⑨ 人の体重がかかる場所には、特別な工夫を
【写真⑨:回転を防ぐためにF字型に工夫した支持フレーム】

ベッドの手前側は、乗り降りする際に人の体重が集中しやすい場所です。
しかも、ただ真下に荷重がかかるだけではありません。
体重のかかり方によっては、フレームを回転させようとする力も発生します。
もしフレームが回転して外れてしまったら、大変です。
そこで今回は、支持部分をF字型にする工夫を加えました。
回転しようとする動きを抑え、フレームが落ちないように考えた構造です。
見た目には小さな違いですが、こうした工夫こそ大切だと思っています。
実際に人が使うものですから、便利さだけでなく、安全性も考えながら製作を進めています。
⑩ 支える脚も、ひと工夫
【写真⑩:食い違いに配置した支持脚】

さらに、フレームを支える脚の配置にも工夫しました。
脚を食い違いに配置し、組み合わせることで、ベッドの骨組みを支える構造にしています。
単純に脚を増やすのではなく、限られた車内スペースでどう支えるか。
ここでも、金属加工の経験とアイデアが活きています。
⑪ 昼間はベンチ、夜はベッドへ
【写真⑪:ベンチ内部にベッド用フレームを収納】

そして、今回のベッドフレームで特にこだわったのが、使わない時に収納できることです。
災害時に車内で過ごすことを考えると、夜はベッドが必要でも、昼間はできるだけ広く使いたいものです。
そこで、ベッドとして使用しない時には、フレームをベンチの内部へ収納できるようにしました。
昼間はベンチとして使い、夜はベッドとして使う。
一台のクルマに、二つの役割を持たせる工夫です。
車内のスペースは限られています。
だからこそ、使い方を切り替えられることが大切だと考えました。
ものづくりは、やっぱり面白い!
今回の製作を通じて、改めて感じたことがあります。
それは、**「アイデアを形にできる仲間と道具があることの強さ」**です。
3D CADで設計する人。
金属加工の経験を活かして、形にする人。
実際の車両に合わせて、試行錯誤する人。
それぞれの知恵や経験が組み合わさることで、少しずつ一台のクルマが変わっていきます。
私たちは、最初から完璧な答えを持っているわけではありません。
つくってみて、気づいて、考えて、またつくる。
その積み重ねです。
普通のクルマを、災害に備えるクルマへ。
まだまだ試行錯誤は続きます。
次回は、いよいよ電源システムへ!
当初は今回、バッテリーシステムの取り付けまでご紹介する予定でした。
ところが、ベッドフレームの製作だけで、ずいぶん長くなってしまいました!
そこで、バッテリーシステムについては次回に持ち越します。
第5回「サブバッテリーと配線施工」

車中泊や災害時に、エンジンを止めた状態でも電気を使えるようにするための、大切な工程です。
どんな仕組みで電気を確保するのか。
そして、どのように車内へ配線していくのか。
次回もぜひお楽しみに!
普通のクルマを、災害に備えるクルマへ。
双輪自動車の「対災害用車両 開発記録」は続きます。
