
普通のクルマを「災害に備えるクルマ」へ。

双輪自動車では現在、新しいプロジェクトとして「対災害用車両改造サービス」の開発を進めています。
近年、日本では豪雨や台風などによる大きな災害が各地で発生しています。
世界的にも極端な気象現象への備えが課題となるなか、これからは自宅に水や食料を備蓄するだけではなく、
「もし自宅で生活できなくなったら、どうするのか?」
というところまで考えておく必要があるのではないか。
私たちは自動車に携わる会社として、そこに「クルマ」ができることがあると考えました。
1,000万円を超えるキャンピングカーを買わなくても、災害に備えられないだろうか。
被災した時に備えて、本格的なキャンピングカーを所有するという方法もあります。
災害時には非常に心強い存在です。

しかし、対災害用として1,000万円を超えるようなキャンピングカーを購入できる方はいいとしても、それを一般家庭に広く普及させるのは簡単ではありません。
購入するための資金。
「災害のために、もう一台クルマを買うの?」という家族の理解。
大きな車両を置いておく駐車場。
そして、車検・点検・修理など、購入後の維持管理。
購入できたとしても、普段あまり乗らない車両を「もしものため」に維持し続けることにも負担がかかります。
そこで私たちは、考え方を変えてみることにしました。
「災害専用車」を買うのではなく、
「普段使っているクルマ」を災害にも使えるようにする。
日本中に広く普及している一般的なクルマをベースにして、必要な機能を追加していく。
それなら、
・特別な駐車場所を新しく用意しなくていい
・車両そのものの調達資金を抑えやすい
・普段の仕事や生活にも使える
・一般的な車両なので車検・点検・修理もしやすい
というメリットがあります。
そして何より、
「災害のためだけに所有するクルマ」ではなく、「毎日使っているクルマが、もしもの時には自分たちを守ってくれる」。
そんな形なら、もっと多くの人や企業が災害への備えを持てるのではないか。
これが、今回のプロジェクトの基本的な考え方です。
PJ6、第1号デモカーは「日産セレナ」
その考え方を実際の形にするため、まず一台つくってみることにしました。
第1号となるデモカーに選んだのは、
日産 セレナ。

街中で普通に走っている、ごく一般的なミニバンです。
このセレナを、
「普段使える。そして災害時には、電気と最低限の生活環境を確保できるクルマ」
へ変えていきます。
完成した商品を突然皆さんにお見せするのではありません。
私たち自身が実際につくりながら、
「これは必要だった」
「これは思ったより大変だった」
「ここは、もっと改善できる」
という部分も含めて、このブログで公開していこうと思います。
今回は、その第1回です。
最初は、シートも内張りも全部外します。
今回行ったのは、
・シートの脱着
・内張りの取り外し
・防振材の施工
・断熱材の施工
です。
【写真:2列目シートを取り外したセレナ】

ポータブル電源や照明、ベッドなどを取り付ける前に、まずはクルマそのものの「基本性能」を変えていきます。
その一つが断熱です。
エンジンを切った車内で過ごしてみると分かること。
災害時に車内で生活することを考えるうえで、大きな問題になるのが「燃料」です。
ガソリンがいつでも給油できるとは限りません。
ですから、夜間ずっとエンジンをかけ、純正エアコンやヒーターを使い続けることを前提にはできません。
夜はエンジンを切る。
そう考えて実際の車内環境を想像すると、問題が見えてきます。
冬の車内は思った以上に冷えます。
反対に夏場は、エンジンを止めれば車内に熱がこもり、非常に蒸し暑くなります。
つまり、エンジンを切った状態でもある程度生活できるクルマをつくるためには、
独立した冷房・暖房と、その効果を逃がしにくくする断熱。
この両方を考える必要があります。
どれだけ冷暖房機器を充実させても、車体から熱がどんどん逃げたり入ったりしていては、貴重な電気を余計に消費してしまいます。
だからこそ、目立たない部分ですが、まず断熱から手を付けました。
【写真:リヤー廻りの内装を剥がしたセレナ】

【写真:天井の内装を剥がしたセレナ】

ところが、この天井断熱が結構きつい。
防振材を貼り、その上から断熱材を施工していきます。
完成してしまえば見えなくなる場所ですが、後から簡単にやり直せるところではありません。
位置を確認して、材料を合わせて、貼り付けて、しっかり押さえる。
そして天井の場合、これをずっと上を向いた状態で行います。
【写真:天井へ防振材を貼ったところ】

これが想像以上に首にきました。
「天井に断熱材を貼る。」
文字にすると一行ですが、実際に一台施工してみると、こうした見えないところにも相当な手間がかかることが分かります。
これも実際につくってみなければ分からなかったことの一つです。
【写真:リヤーゲートにも内装を剥がし】

【写真:リヤーゲートの内側へ断熱材を入れていきます。大きいと入らないのである程度の大きさにしてます】

【写真:リヤーゲートに断熱材を入れました】


そしてもう一つ。「雨の音」への対策。
今回、断熱材と一緒に防振材も施工しています。
「災害対策なのに、なぜ防振?」
と思われるかもしれません。
雨の日に車中泊をしたことがある方なら、経験があるのではないでしょうか。
周囲が静かな夜。
車体の薄い鉄板に、
パラパラ、パラパラ……
と雨粒が当たり続けます。
昼間ならそれほど気にならない音でも、静かな車内で眠ろうとすると、意外とうるさく感じます。
まして、豪雨や強い風雨の中で車内待機することになれば、なおさらです。
そこで今回は、鉄板部分に防振材を施工しました
(施工順は防振材を入れてから断熱材で紹介と逆になります)。
【写真:防振材施工(銀色のシートはレジェトレックスD300-N ポイント制振材)】

単に「寝られるスペースをつくる」のではなく、
少しでも身体を休められる環境をつくる。
これも対災害用車両に必要な性能の一つではないかと、私たちは考えています。
私たちも、まだ「正解」を持っていません。
PJ6は、すでに完成した商品を紹介する企画ではありません。
実際につくる。
使ってみる。
問題点を見つける。
そして、また改良する。
その過程そのものを皆さんに見ていただきながら、対災害用車両の形をつくっていきたいと思っています。
だからこそ、ぜひ皆さんにも参加していただきたいのです。
「災害時、クルマに何があったら助かりますか?」
電気でしょうか。
冷暖房でしょうか。
横になれる場所でしょうか。
水でしょうか。
トイレでしょうか。
それとも、私たちがまだ気付いていない何かでしょうか。
実際に車中泊を経験した方。
災害を経験した方。
そして、電気・通信・建設・警備など、災害が起きても仕事を止めることのできない方。
ぜひ、
「こんなものがあったら助かった」
「自分なら、こうしてほしい」
という声を聞かせてください。
その声を、このPJ6に取り入れていきます。
次回は「床」と格闘します。
第2回は、床の施工です。
クルマの床なんだから、板を切って敷けばいい。
……と思っていました。
ところが実際に内装を剥がしてみると、当然ながら床はきれいな長方形ではありません。
凹凸があり、曲線があり、場所によって形が違う。
この「異形の床」の寸法をどうやって取るか。
ここでも、思った以上に苦労することになりました。
次回、
PJ6開発記録②「クルマの床は四角じゃない。異形の床との格闘」
をご紹介します。

普通のクルマを、災害に備えるクルマへ。
対災害用車両 PJ6。
完成まで、ぜひ一緒につくってください。
