― 普通のクルマを、災害に備えるクルマへ。―

双輪自動車が取り組んでいる「対災害用車両」の開発。
この取り組みの出発点にあるのは、
「災害で困った時に、少しでも誰かの助けになりたい」
という想いです。
私たちはクルマの専門家です。
では、クルマの専門家だからこそできる災害への備えとは何だろう?
考えた末にたどり着いた一つの答えが、
「今ある普通のクルマを、対災害用に改造すること」
でした。
第一号のデモカーとして選んだのは、日産セレナ。
第1回では内装をすべて取り外し、第2回では複雑な形をした車内の床と格闘しました。
そして第3回。
今回のテーマは、**「天井照明」**です。
① まずは天井を剥がした状態から
【写真①:天井を剥がした状態】

こちらが、天井の内張りを取り外したセレナです。
すでに前工程で、防振材・断熱材を施工しています。
普段クルマに乗っているだけでは、まず見ることのない光景ですね。
今回は、ここに元々付いていた天井材を加工して、新しくフロアライトを埋め込んでいきます。
「照明を付けるだけなら、それほど難しくないのでは?」
と思っていたのですが……
セレナの天井は、そんなに単純ではありませんでした。
② 外した天井材を、まずは測量
【写真②:取り外した天井材を測量】

取り外した天井材を工場の床に広げます。
ご覧いただくと分かるように、セレナの天井材は大きな一枚物です。
しかも、真っ平らではありません。
エアコンの吹き出し口や既存の設備があり、場所によって凹凸もあります。
今回は、この天井に複数のフロアライトを取り付けます。
せっかく取り付けるなら、
できるだけ左右のバランスが良く、なるべく平らな場所へ取り付けたい。
そこで、まず取り付け位置を探していきます。
③ 曲面相手の位置決め
【写真③:レーザーを使った測量】

ここが今回、かなり苦労したポイントです。
メジャーや定規だけでなく、レーザーも使いながら位置を確認していきました。
クルマの天井は、住宅の天井のような平面ではありません。
しかも天井材の裏側には、エアコンのダクトなども配置されています。
表から見れば取り付けられそうでも、裏側を見ると取り付けられない。
逆に、設備を避けることばかり考えると、今度はライトの位置が不自然になってしまいます。
「ここなら平らか?」
「裏側に何かないか?」
「左右の位置は揃っているか?」
何度も確認しながら、一つずつライトの位置を決めていきました。
④ 位置が決まったら、いよいよ穴を開ける
【写真④:天井材への穴開け作業】

取り付け位置が決まったら、フロアライトを埋め込むための穴を開けていきます。
ここまで来ると、ちょっと緊張します。
測量している間なら、まだ位置を変更できます。
しかし、
一度穴を開けてしまえば、元には戻せません。
ライトの大きさに合わせて、一か所ずつ加工していきます。
⑤ 全部の穴が開きました
【写真⑤:すべての穴を開けた天井材】

こちらが加工を終えた天井材です。
丸い穴が、今回新しくフロアライトを取り付ける場所です。
最初の状態と比べると、少しずつ「対災害用車両」のための天井へと変わってきました。
とはいえ、この状態だけでは完成した姿をなかなか想像できません。
実際に車両へ戻して、ライトを点灯させてみます。
⑥ 点灯。雰囲気が一気に変わりました。
【写真⑥:フロアライト完成・点灯】


完成です。
写真では少し伝わりにくいのですが、実際にライトを点けてみると、
車内の雰囲気がずいぶん変わりました。
いかにも「クルマの中」という空間から、少しアットホームな、落ち着いて過ごせる空間へ。
照明一つで、こんなにも印象が変わるものなのかと感じました。
そして今回、もう一つこだわったのが明るさの調整です。
ON・OFFだけではなく、必要に応じて光量をアナログで調整できるようにしました。
夜に休む時と、何か作業をする時とでは、必要な明るさも違います。
今回はまず動作確認まで。
この後、バッテリーシステムとの接続を含めた本格的な配線施工へ進んでいきます。
エンジンを切ってから使える「明かり」
なぜ、対災害用車両に独立した照明が必要なのか。
実際に車中泊する場面を想像すると、理由はとてもシンプルです。
夜になってエンジンを切った後も、
食事をする。
荷物を探す。
着替える。
家族と話す。
そして眠る準備をする。
クルマのエンジンを切っても使える「明かり」は、車内で生活するうえで欠かせません。
災害時だからといって、ただ「車内に居られればいい」のではなく、
少しでも落ち着いて過ごせる空間にしたい。
それも、この対災害用車両で私たちが大切にしていることです。
次回、一気に「クルマの中身」が変わります。
ここまでは、
内装を外す。
床をつくる。
照明をつくる。
と、いわば車内空間の「下準備」が中心でした。
しかし、次はいよいよ大物です。
第4回
「バッテリーシステムとベッドフレームの組み立て」
ここから、対災害用車両らしい姿が一気に見えてきます。
しかも今回は、単純にフレームを組み立てるだけではありません。
3D CADを使って設計し、実際の車両に合わせて金属を加工していく。
設計図の世界と、実際のクルマとの違い。
そして細かな金属加工との格闘。
次回も、ぜひお楽しみください。
普通のクルマを、災害に備えるクルマへ。
双輪自動車の「対災害用車両 開発記録」は続きます。
